「速さ, 時間, 道のり」は小5算数では難しい単元であるとされていて、それを助けるために「みはじ」という道具を使うことがよくあります。例えば、道のり36kmを6時間で移動する時の速さは? について、
このように処理します。非常によく知られた方法で、小学校でこれを習った人も多いかもしれません。中高で使われることさえあります。ただ、この方法は非常に賛否が分かれており、害の方が大きいと言う人もいます。私もこの方法にはかなり懐疑的です。
速さは難しいと言われていますが、これは単に「掛け算で大きさを表したもの」に過ぎません。それまでにたくさん見てきた「掛け算」の問題と何にも変わりません。
つまり「速さ」を難しいと思ってしまう最大の原因は、「速さ」について今までとは全く違う何かだと思い込んでしまうことにあります。
これは教科書が単なる掛け算について、それを「単位あたり量」と呼んだり「割合」と呼んだり、細かく分けて分類してしまうことにも原因があるのかもしれません。
また、掛け算そのものがよく分かっていないことも原因の一つです。掛け算についてよく分かっていない小学生は、想像以上に多いと言えます。昔と異なって、「何かを数える」経験は非常に少なくなっていますし、お金の計算をする機会もかなり減っています。
その結果、例えば1000個のブロックを数える時に、「2, 4, 6...」と数えたり、「2, 3, 5, 2, 3, 5」とまとめて数えていく、10ずつの山を作るといった行動を自然に取れる小学生は少数派です。昔と比べて乏しい「掛け算の実感」を補う必要があります。
例えば、このような絵を自分で書くことも非常に大事です。 このような図は「学校や塾で説明用に使われるもの」と考える方もいますが、 これは実際に、小学生が自分で書いて、自分で状況を確認する ための図です。
学校のテストでは、必ず「式」と「答え」の欄があります。しかし、この式と答えで算数を考える方法は、小学生にとって非常に困難を伴います。たとえば以下のような簡単な問題があるとします。
例題: 12個のアメで4人分とします。
この時、3人分では何個になるでしょう。
いろいろな出し方がありますが、これを式で表すと、例えばこうなります。
$12÷4=3$、$3 \times 3 = 9$、答え9個
この時、「問題文」から式を作ることはできても、式から問題文を再現することは できません。 数は量だけを示していて、それが何人なのか、何個なのか、どんな状況なのかを削ぎ落としてしまうからです。 しかし、以下のように書けばどうでしょう。
何をしているのか一目瞭然です。数式は「状況を抽象化して表すもの」です。逆に言えば、「状況が把握できていない」のに、数式で答えを出しても算数として解けたことになりません。式の前に、状況を絵などで確認するくせを積んでいけば、実体験による経験の不足を補えます。
「みはじ」は非常に議論の多い、賛否が激しく分かれる手法です。 ただ、これは単に一つの現れに過ぎません。 それ以前の単位あたり量、「何個で何人」というような感覚が非常に薄いまま、式で無理に考えてきた結果だと私は思います。