中学英語はかなり難しくなりました。 特に、この地方の教科書 Here We Go は、数ある教科書の中でも、かなり意欲的な教科書です。 その難度もかなりのものです。 ただ、この「難しくなった」ということについて、少し誤解があるような感じもします。
覚えなければいけないことは確かに増えました。 しかし 3年間の総量 で見れば、実は大して増えていません。 これは一体どういうことか。
例えば Here We Go、中1の Unit 1 ~ Unit 5 を見てみます。
このような内容の文が、あちこちに散らばっています。 難しくなったでしょうか。そうでもないでしょうか。 かつての教科書であれば、同じような内容でも以下のような整理のされ方になるでしょう。
考え方が全く違うのです。 現在は、一つの Unit に「これでもか」と様々な要素を盛り込みます。 かつての中2,3内容が、たった一文だけ混ざり込んで来たりもします。
ある程度は慣れた人なら問題ありませんが、問題はこれが中1だということです。 ルールが全く見て取れません。 異なるルールのように見える文が乱雑に散らばっているように見えます。
3年間で覚えなければいけない文法は、たった2つ (仮定法, 現在完了進行) 増えただけです。 しかし、その時々の定期試験までに覚えなければいけない文法事項は大量になってしまいました。 結果、中学生の多くは英語で大混乱を起こします。
英単語でも同様です。 従来は中学卒業までに習う単語数は約1200語でした。 教科書によって前後しますが、これが約1600~1800語に増えました。 小学校では600語を習うとさていますので、合計で約2200~2400語程度になります。 つまり保護者の方の時代に比べて約2倍です。
2倍ですから、非常に多そうに見えます。 しかし、実は大して変わっていません。 「重要な語」と「そうでもない語」があるからです。 例えば、重要であるに決まっている代名詞を取ってみましょう。
主格 | 所有格 | 目的格 | 所有代名詞 | 再起代名詞 |
---|---|---|---|---|
I | my | me | mine | myself |
you | your | you | yours | yourself |
he | his | him | his | himself |
she | her | her | hers | herself |
it | its | it | itself |
主格, 所有格, 目的格が重要であるのは間違いありません。 ただ、所有代名詞, 再起代名詞となると重要さが減ります。 mine を除き、所有格や目的格の変形に過ぎません。 同じように、語尾変化を起こしただけの派生語も、大して重要ではありません。
以上のように語幹部分が共通のものも多くあるからです。 一つ覚えれば片方を覚える困難は格段に低くなります。
極めて重要な語の数は大して変わりません。 変わっていませんが、中学生にとっては異なります。 どれが致命的な単語なのか、更に分からなくなります。 数が増えたことで、単語1つ1つの価値が満遍なく下がってしまったからです。
英語が難しくなった、このように言われることの正体は、 重要であることの総量は大して変わっていないのに、 その時々に強制される覚えるべき量が増大した点にあります。
その結果、生じてしまったのが群馬県公立高校入試で起きた得点分布の偏りです。 恐ろしいことに、100点中の20点が最頻値、20点付近と70点付近のフタコブラクダです。 完全に放棄してしまった人か、それなりにする人、この2種類の真っ二つです。
英語はできる限り早い段階で「重要度を絞った基礎部分」を徹底して習得しておく必要があります。 難しいことをする必要はありません。 むしろ「簡単なことを完璧にする」ことが何より重要になっていると言えるかもしれません。